朔風払葉



「24日はっ!っしゅーぎょーしき!」

「何かあって言う間だったよな」

「24日はって言うけどね、秀。まだ11月27日だよ。キミの言う24日は12月の24日で、まだまだ先だからね」

「……さむ…」

「12回」

「でももう1ヶ月もするとみんなそれぞれに帰るんだよな。…父さんといれるのは嬉しいけど、みんな離れるのは俺、寂しいなぁ」

「いや待て、待つんだ遼!」

「?」

「あー、……寒い」

「13回」

「24日は終業式だけど、別の日でもあるだろ!」

「別の日…?何かあったっけ?」

「24日は、ク………?」

「…く?」

「クリ?」

「くり……栗、…饅頭?」

「そうじゃねー!クリス、マ……?」

「そうか、クリスマスイブだ」

「そー!クリスマスイブ!で、パーティだ!アーンド!」

「……………さむいー…」

「14回」

「25日本番はクリスマスパーティだ!っつーか、さっきから、とーま!お前、寒い寒いうるせーよ!そんで征士もそれ数えてんじゃねーよ鬱陶しい!」

「秀は騒ぎすぎで煩いけどね。大体キミ、クリスマスイブだクリスマスだって浮かれてるけど、次の期末試験、大丈夫なの?
前のとき、英語と古典が特に酷かったみたいだけど今回は大丈夫なの?ちゃんと勉強してる?」

「そうだぞ、秀。わからない事はそのままにせずに、早い段階で確認をしておくべきだ」

「耳が痛いこと言うなよ!今日はクリスマスツリーの飾り付けを買いに来たんだろ!?これからチマチマ買っていこうってみんなで決めて
買いに来たってーのに……つーかよ、征士も急にマトモな会話に戻ってきてんじゃねぇよ!」

「それだけお前の成績が酷いんだろうが、あーさむ…」

「15回」

「当麻、本当にさっきから寒いばっかり言ってるな…風邪か?大丈夫か?俺のマフラー、貸そうか?」

「うん、遼。優しいのはいい事だけど、キミのマフラーを巻く前から当麻は既に自分のを巻いてるって事に気付こうね」

「あっ」

「大体、当麻は日常における根性が足りんのだ」

「足りんって言うけど、北国生まれのお前に俺の寒さが解るわけないだろ。関東は関西より寒いの。その寒さは俺には慣れないの」

「でもお前、確か夏は夏で暑い暑いって言ってたじゃん。大阪の方が断然、暑いだろ」

「それはそれ、これはこれ」

「出た、当麻の”それはそれ”」

「何だよソレ……あのな、俺が今寒いのは耳だからな、耳」

「耳?当麻、耳が寒いのか?」

「耳当てでも買うかい?」

「ヤだよ、耳当てなんて。子供か、せいぜい女のするもんじゃないか。俺は男だぞ、嫌だよ恥ずかしい」

「恥ずかさよりも防寒を優先せんか」

「でも考えてもみたら、俺たちの中で当麻だけだよな、髪が短いのって」

「あ、そーいやそうだな」

「キミ、ちょっとだけ伸ばしてみたら?」

「無理、俺、首や耳に髪が触るの苦手」

「そうなんだ。…でもホント、キミって寒がりの癖に短いね、髪」

「それに髪が真っ直ぐだから、髪の間に空気が入らんで寒いのか」

「え、征士の髪ってそういうモンだったの?保温性兼ねてんの?」

「そういうつもりで言ったわけではないのだが………」

「じゃあどういうつもりで言ったのさ」

「………私にもそれは……ちょっと解らん……つい、口をついて出てしまった…」

「でもさ、確かに俺たちって、当麻以外は癖が強い髪してるよな」

「当麻だけがストレートか。そんで当麻だけが髪の色が特徴的」

「…色の事は言うな」

「あれ?もしかしてキミ、髪色の事、気にしてたの?」

「神経質にまではならなくても、敢えて言われるのは何となく好きじゃない」

「お、そーだったんか。そりゃ悪かった」

「あーそれにしたって寒いな…ホント」

「16回」

「もういいじゃない、征士、数えなくたって」

「何となく気になってしまうのだ」

「いやいや、そうやって数えるお前の方が俺らからしたら気になるって」

「そういうものか?」

「うぅん…ちょっと気になるかな。何回まで数えるつもりかなってくらいには」

「………遼が気にするほどなら、流石にやめるか」

「え?」

「っさー!ほらほら、当麻の耳が本格的に冷たくなる前にさっさと買い物して帰ろうか!」




*****
ゴチャゴチャ騒ぎながら、オーナメントを買い集める5人。
この少し先には「海へ」で落ち込む。

二十四節気のうち小雪の次候で朔風払葉。北風が木の葉を払いのける、そうです。