アンド、



あっはっは。
いやーあ、……あっはっはっは、……はぁあ、…あぁ…。

今日は何だってんだよ…

何か蹴った気がして目ぇ覚ましたら外はまだちょっと暗いし何時だろうと思って時計見たら朝の4時で、俺にしては早起きしちゃってさ。
(征士でも起きてねえよ、この時間)
で、何蹴ったんだろう?って掛け布団捲って確認したら、足の間に乳幼児っていうのか?2歳くらいの子供がいてさぁ、
もうそれだけで頭真っ白なのに、よく見たらそのガキ、俺と同じ髪して俺と同じ顔してんだもん。

いや、俺だって2歳当時で自分の顔を認識して覚えてたワケじゃないけど、ホラ、写真あるだろ。
俺にだって子供の頃の写真くらいあるから(それも結構な量ネ。お袋の趣味で)さ、それで当時の自分の顔ってのを覚えてるんだけど、
まーあ、見事にソックリ、瓜二つ。

もうね、パニック起こしたね。久々だよ、俺、パニック起こしたの。何年ぶりだよ。
2歳くらいって事は仕込もうと思ったら今から約3年前になるわけで、それってつまり俺は13歳で、その時に身に覚えがあるかって言うと
当然なくって、アレ?でも俺の足の間にいるって事は若しかして俺が産んだの?とか考えちまって腹撫でたりしちゃって、
ソッコー、ねーよ!ってなって。(そもそも俺、男だし、種付けされた覚えないし。あったら怖ぇよ!)
ワケ解んないけど2歳くらいの俺がいてそれも裸で、どうしていいか判んなかったから取敢えず裸はマズイって思ってさ、
(だって仲間に裸見られんのヤだし。今のなら兎も角、子供の頃のを見られるのって何かヤだ)
タンスから適当にTシャツ出して着せて(それでも起きないんだよコイツ。そもそも最初に蹴った時も起きなかったし…誰に似たんだよこの図太さ)
よし落ち着こうって思ったら、なぁんか妙に懐かしい匂いって言うか気配がするんだよな、その子供から。
で、よぉーっく集中してみたら外からも同じ気配がしてんだよ。
それで、あ、あっちの連中が出てきたんだなって気付いて、大急ぎでその気配のするほうに走ってったら、あったよ、懐かしの妖邪門。


あの子供に纏わりついてた気配から考えても原因は明らかにこの先にあるしさ、門が閉まりきってなかったからもう後先考えずに飛び込んで、
そしたら懐かしい妖邪兵なんて出てきちゃってさ。俺、よく考えたら鎧玉持って出てなかったんだよな。(相当テンパってたな…俺)
いやぁー……擬亜も鎧もナシの戦闘って、相当キツイもんだな。
途中で螺呪羅が来てくれたから良かったものの…助かったーって思った。うん、本当。この時”だけ”な。

何か妖邪界って言うか、煩悩京はまだ大変みたいだった。
妖邪兵の残りが未だウロウロしてて、衝動のままに暴れてるせいであちこちまだグチャグチャで。
いくらオッサン連中が強くたって、たった3人じゃ埒が明かない。
例えば西で暴動があって抑えてるのに東や南で更に暴動が起きてしまってる状態だ。
力だけじゃ駄目だってなって、策がいるってなったんだって。
そりゃそうだよな。力を活かすための策がなきゃ、ただのイタチゴッコだ。

でもそこで問題発生。
9つの鎧の中で軍師は俺だ。
でも俺は煩悩京の人間じゃなくて、現世の人間だ。
あっちとこっちじゃ時間の流れが違いすぎて、俺を呼び寄せるのは流石に無理だって連中も判断したらしい。
(そう判断してもらわなきゃ、俺は浦島太郎になっちまう)
でも軍師は必要だ。

さあどうしよう。
ってなった時に、偶然、聖霊殿で見つけたんだって。

何をって、”俺の髪の毛”。(よく見つけたな…ホント)

それにしても………………
あああのさぁ、策は…そりゃ、まぁそういうのとは違うって解るけど、何でクローンを作る技術はあるのに、暴動を抑えきる技術っつーか装置がないワケ!?


もうズバっと言っちまうけど、あのチビは俺のクローンってワケ。(煩悩京の連中はクローンって言葉知らなかったけど。って当然か)
煩悩京の時間でつい3日前に赤ん坊の姿で生まれて、急いで成長させてる最中らしい。
そこまでは、まぁいい。
事情も、何で俺とそっくりの子供がいるのかっていうのも解ったから、いい。
(あんまり良くないけど。俺に断りなくもう一人の俺を作ったとか、正直良くないけどソコに拘ってちゃ話が進まん)


納得がいかないのは、何でそれを俺のトコロに置いてったかってコトだよ!
何だよ、聖霊殿の掃除って!!!
何回も言うけど、暴動起きてんだろ!?そんな余裕あんのかよ!!?
何してんだよ!って怒鳴ったら、那唖挫の野郎、すっげー真顔で、


「赤子は抵抗力が低いのだ。汚れた場所で育てるワケにいかんだろう」


って言いやがんの!!
あーそーだよな!俺だって埃っぽいところでなんか育ちたくねーわ!つーか俺じゃねーけど!俺のクローンなだけだけど!!

じゃあまぁ、そこは理解したとしてさ、しょうがないからもう俺、寛大な心でソコは理解という言葉で流しておいたよ!
掃除は必要ですよね、そうですよねって。で、話しの続きを促してみたらお前…
聖霊殿を大掃除するっつーから、じゃあこの子供をどこかへ預けておかなくちゃねってなって、

何でそこで俺の股の間なんてピンポイントな場所に置いて行くんだよ!!

それも置いてったの、螺呪羅だって言うじゃねえか!!
クッソ、感謝して損した!助けてもらったとか思ったけど、アイツ、帰る途中で異変に気付いて戻ってきただけだった…!!!

何してくれてんだよ!って思ってたら、あんのクソ白髪、


「そちらに着いたは良かったが、まだ夜も明けておらんかったものでな。なので、まぁ同じ人物だし、その何だ、ちょっとした、
……さぷらいず?とかいうものを仕掛けてみたまでの事」


って……。
アホか要らんわそんなサプライズ!て言うか、どこで仕入れてん、そのサプライズっつー単語も!
何ニヒルに笑とんねん、アホか!ボケか!笑うとこちゃうわ、ハゲ!!!

兎に角、返す!って言おうと思って俺、そこでやっと気付いたんだけど………


原因のそのチビ、俺、自分のベッドに置いて来てたんだよな………




煩悩京でちょっと過ごしちゃって、こりゃあっちでも時間が結構経ったかって思うと凄い気が重かった。
今頃大騒ぎなんだろうなぁ…って。
帰ったら多分、征士と伸のダブルで(俺は悪くないのに)説教だろうなぁ、ヤだなぁ面倒だなぁ…
あのチビが何者かっていうだけならいいけど、どうしよう、俺の子だろう何で子供を1人残したとか、お前年齢考えろとか、不純だとかすげー言われそう…
いや、それよりもある意味もっと嫌なのは、俺の弟だと思われた場合だよ……あああ、ホント、親父とお袋のせいだ、勘弁してくれよ…
何かすっげー恥ずかしいっていうか……居た堪れないっていうか…

とか考えながら、それでも一から全部説明しなきゃなんないよなぁ…って迦遊羅と言いながら戻ってきたんだよ。
(煩悩京の長は今、迦遊羅だしな。まだ子供なのに悪いけど、やっぱり代表者からの言葉ってのは大事だし)



でも帰ったら遼しかいない。
それに何か知らんけどチビは寝てて、それも服着替えてて、あーコレは何かヤな予感…
って更に気が重くなってたら、

何でコイツが俺って事になってんだよ!!!!

おっかしーだろ!
どう考えても16歳が急に2歳になったりしないだろ!?
どんなファンタジーだよ!!!
冷静に考えろよ!!


そもそもそのチビを俺だって判断した理由が、髪と目の色と、Tシャツと、あと何だよ、内腿のホクロって!!!
…………まぁ、…確かめたら本当に俺、そこにホクロあったけどさ。(自分の体なのに知らんかった……何で征士知ってんの?)


しかも皆が散々ソイツを「当麻」って呼んだせいで、このチビ、自分の名前を「当麻」って覚えちまってるし……
当麻は俺だよ、チクショウ、ややこしいな……!




結局、説明したけど聖霊殿の、せめてこのチビが使う部屋が片付くまでのあとちょっとの間はこっちで預かる事になっちまった。
ま、基本的に寝てるからまだ楽なんだけどさ……何で俺の膝の上で寝てんの。
ていうか何で伸と征士はそんなに羨ましそうな顔してんの。
つーかコイツら、何の前フリもなく急に俺の髪撫でたり(「やっぱり大人と子供じゃ髪質は違うもんなんだねぇ…」って言いながら)、
無言で尻撫でたりしてくるんだよ!
(それも真顔で撫でてきたんだぞ、征士のヤツ!痴漢に遭ってヤメロって言える女性を俺は心から尊敬するね。俺、声出んかった…怖すぎて)


っもー、…ホンット、今日は朝から何だってんだよ………


あー膝重い。
朝早かったから俺も眠いってのにさぁ…
コイツ、子供だからミルク臭いし。
俺、子供の時こんなんだったのかなあ…?




*****
こういう事情。