アンド、
子供が指しゃぶりする時って、寂しい時だったっけ?
なぁ、白炎、どうだったっけ?
……って言うか、何で当麻、1人でリビングにいるんだ?
「当麻、他の皆はどうしたんだ?」
「………あー…」
あ、振り返った。
やっぱりちょっと不安だったんだな。
目が少しだけ潤んでる。
全く、子供なんだから放っておいちゃ駄目だってみんなで言ってたのに、それをみんなして忘れてるんだもんなぁ…
ナスティは買い物に行ってるだろうから仕方ないとしても。
「伸は?」
「あっち」
庭………洗濯物干してるのかな?
「秀は?」
「あっち」
秀も庭?………遊びに出てるにしても伸に見つかる時間帯に出るか?
手伝ってるのかな?
…うーん…秀の性格なら当麻を理由に逃げそうな気がするんだけどなぁ、俺。
「じゃあ、征士は?」
「……んー?」
征士は、分かんないか。
まぁ、当麻の持ち方と伸の怒りっぷりからしたら、征士はあんまり当麻と関わってないかもな。
(ていうか関わるのを伸に禁止されてても不思議じゃないよな)
だったら、分かんなくて当然だな。
よし、じゃあしょうがないな。
「当麻、俺と遊ぼうか?」
「………………」
「……………遊ばない?」
「………んー…」
え、ちょっとショック。
俺、そんなに子供に好かれないなんて思って無かったんだけど…
当麻が人見知りなだけ?いや、でも伸が征士から当麻を引っ手繰って抱っこした時、普通にしがみついてたよな。
……て事は、若しかして俺、当麻に嫌われてる、とか…?
…………。
そうだよなぁ…妖邪界に乗り込む時もモメたのに、結局乗り込んでその上散々当麻に守ってもらって、怪我までさせたもんなぁ…
実は嫌われててもしょうがないかなぁ…
「……………あん、なぁに?」
「……”あん”?」
指差してるのは………白炎?
あぁ、”あん”って、”あれ”って言いたかったのか?
「…白炎だよ」
「ばくえー?」
「びゃくえん。…って子供には言い難いか」
「びゃくえ、かむ?いたい?」
「……へ?」
…ああ、そういう事か。
俺と遊ぶのが嫌なんじゃなくって、白炎が何か判らないから怖かったのか。
「白炎は虎だけど、噛まないし怖くないぞ、当麻」
「とらー。いいこ?」
「うん、イイコだ。優しいし白炎は当麻のこと、大好きだぞ。おいで、白炎」
「………おおちー」
「うん、大きいな。頭撫でてやってみろよ。ほら、こうして」
「……いいこいいこ」
はは、ちょっと怖がってるな、当麻。
もじもじして服の裾掴んでる。可愛いなぁ。
…って、服?
アレ?いつの間に着替えたんだ?
って事はナスティってば帰って来てるのか?
「当麻、ナスティはどこだ?」
「なうちー?」
「女の人だよ。髪の長い」
「………あー、…あっち」
玄関?いや、俺、玄関から帰ってきたけどナスティには会わなかったな。
また出かけたのかな?
…ま、いっか。それよりも。
「当麻、何したい?」
結局、当麻って子供のときから当麻なんだなぁ…
何したい?って言ったら、ねんね、って……
白炎、悪いけどもう少しじっとしといてやってくれよ。
当麻、キモチ良さそうに寝てるだろ?
多分だけど、白炎の体温が気持ち良いんだと思うからさ。
しょうがないよ、子供は寝て遊んで食べて寝てが仕事だもん。
はは、あとでブラッシングしてやるから。な?
…それにしても2歳くらい、かぁ。
きっとこれくらいの歳だったら当麻の親もまだ離婚してなかったんだろうな。
俺たちの事を忘れてたから記憶も何もかも全部、2歳の時の当麻のものになってるんだろうけど、だとしたら親がいない事に
不安を覚えたりしないのかな?
親がいないのにそれで泣かないけど、もうこの歳の頃から当麻の家って親が不在がちだったのかな?
それにココ、知らない人ばっかりなのに…平気なのかな。
若しかして余所の家に預けられたり…してたのかな…
そう言えば俺がリビングに入ってきたときも、真ん中で泣きもせずにじっと立って指しゃぶりしてたもんな。
ずっとこうだったのかな…
何か……可哀想だな。
こんなに小さい手なのに、なぁ…
わっ、指持っていったら握ってきた!
無意識なのに面白い。
そういえば確か母さんも言ってたっけ。赤ちゃんに指を差し出したらきゅって掴むって。
指、小さいな。
小さい指に、小さい爪が並んでる。
こんなに小さくたってちゃんと人間の形をしてるんだよな、子供って。
そうかぁ…可愛いなぁ……当麻、こんなに可愛い子供なのになぁ…
ずっと、……寂しかったのかな………
あ、駄目だ。何か泣けてきた。
まだそうだって決まったわけじゃないし、勝手に俺が思っただけなのに泣いたりしたら、失礼だよな。
当麻が聞いたら絶対、勝手に妄想して勝手に人を憐れむなってすっごい嫌がられそうだ。
うう、駄目だ駄目だ。
あ、白炎、俺は大丈夫だから。
うん。当麻、起こしちゃうから。
大丈夫、うん。大丈夫。
もう少し横になっててやってくれよ。
…うん、当麻、凄く気持ち良さそうに寝てるから。
「ただいま」
って、あれ?
「あ、おかえり」
「みんなは?」
「えぇっと伸と秀は庭。征士は知らない。で、ナスティはどこかへ行ったみたい」
「へぇ、そう」
「うん。あれ?迦遊羅?」
「お久しぶりです、烈火殿」
「久し振り。あれ?煩悩京行ってたのか?」
「ああ。ちょっと聞きたい事があって」
「ふーん。で、迦遊羅を連れてきたんだ」
「そういう事。困ったな。みんな揃ってる方が良かったんだけど…」
うーんって唸りながら当麻が頭を掻いてる。
…………。
…………………。
…………えっ。
「え、当麻!?」
「?…そうだけど?」
「と、当麻!!?」
「だからそうだって」
え、えええ、じゃあこっちのこの小さいのは…!?
「どっちも、当麻!!?」
*****
大きな当麻も登場。