アンド、
一体何がどうなったと言うのだ。
いつものように起きて着替えて竹刀を持って庭に出て素振りをして部屋に戻って着替えるついでに当麻を起こそうとしたら、
何だ、あれは、どいういう事だ。
私が起こそうとして布団を捲くった時にはもうあの姿で、Tシャツ1枚だけ着て丸まって寝ていたんだが…
参った。さっぱり意味が解らん。
いや、それよりも大泣きされたことのほうが参ったか…?
もうどうしていいのか解らん上に、伸に怒られたわけだが……どうして私が怒られねばならん。
確かに子供の抱き方にしては随分ぞんざいだった事は認めよう。
だがあの時点では、私の中ではあれは仲間の”智将・当麻”だと思っていたからこその扱いであって、幾らなんでも子供、ましてや
乳幼児としか思えないような年齢の子供ならそれなりの扱いはした。
……と、思う。
ああ、それよりも何故当麻がああなったのかを考えるべきか。
それともどうやって戻すかを考えるべきか。
戻す事を考えるにしても原因が解らねば対処は出来んし、しかしだからと言ってこんな事になるような原因をどう考えればいいのかも解らん状況だ。
打つ手なし、か…?
いや、諦めてはならん。
当麻だって不便しているはずだ。
現に今も、…………。
……………、…?
………………??
「…どうした?当麻」
椅子に座らされて随分と困った顔をして。
それに伸はどこへ行った?
こんな小さな子供を1人残して離れてはいかんだろうに。
私に子供の扱い云々に関して散々ご高説を垂れてくれたくせに、自分は幼子一人を残してどこへ行ったというのだ。
「うー、んー、んー」
それにしても当麻もさっきから何を足をぱたぱたと………何だ?降りたいのか?
愚図ってばかりでは解らん。
「降りるのか?」
「んー……うん」
……何故私を警戒する。…何と言うか……傷付くな。
あぁ、それにしても固定具が外せんのか。
ナスティが子供の頃に使っていたという子供用の椅子は、確かに安全のために固定具が付いていたからな。
幾ら当麻と言えど、流石にコレは外せんか…。
「じっといしていろ」
手を伸ばしただけでビクつかれては、いちいち行動が面倒だな…。
くそ、私の事が認識できていればこういう事もないだろうに。
大体何故、善意でしてやっているのにそんなに警戒されねばならん。
いつもいつも世話をしてやっているのは誰だと思っているんだ。
毎回毎回、毎朝毎朝いつまでも寝ているのをどれほど根気よく私が起こしていると思っているんだ…!
最近など本当に丸投げになってて、着替え一つにしても「ズボン脱がして〜」とか寝たまま言い出す始末だしな!
全く……まぁそのお陰で当麻の内腿にあるホクロが、この子供にあるのにも気付けたわけだが……
そう言えば折角有力な情報をやったというのに、何故みんなああも微妙な顔をしていたんだろうか。解らん。
……それにしてもコレは…なかなか外れんな。
古くて固くなっているのだろうか…?
っ…!ああ、やっと外れた。
「…………」
「………何だ」
「……。……あーとお」
………………!!!!
これは……!……ちょ、…ちょっと可愛すぎないか!
当麻のくせに!当麻のくせに、頭をペコンと下げるとか、…当麻のくせに、可愛すぎるだろう!!
「…んー……んー、」
?まだ愚図るか。
他に何がある?
「…何だ?」
「………おしっこ」
「なに……!?」
お、おしっこって言われても…!どうすればいいんだっ!?
いや、トイレだ。トイレに連れて行けばいいのか…!
と、言うわけでトイレに連れてきたはいいが…ここからどうすればいいのだ…。
取敢えず自分でさせるしかないだろうな。
幾ら子供と言えど相手は当麻だ。
排泄の手伝いなどしては、今は良くとも戻った時に万が一記憶が残っていたとすれば、これほどの恥辱はないだろうしな。
しかし困ったな。
高さが足らん。
便座に座らせるにも体が小さすぎてハマってしまいそうだし…。
「当麻、少し待っていろ。何か台になりそうなものを持ってくるから…」
とは言ったものの、何か踏み台になるもの、踏み台になるもの…。
脚立…は、駄目だな。高すぎる。
台所に適当な高さの踏み台があった気がするのだが、あれは普段どこにあるものだ?
リビングに適当なものはなかったか…?雑誌を重ねて…は、足場が不安定で危ないか。
書斎の椅子は…駄目だな、椅子自体が大きくてトイレに持ち込めん。
困ったな…
普段目にしているはずなのに、適当な物がないぞ。
うーむ……洗面所に何かなかっただろうか…。
「…………あー、」
…?何だ?
当麻、お前、何故ここにいる?
「…今度はどうした?」
「………てて、あーうの」
「てて?あーう?」
てて。
手手…ああ、手か。
では、あーう、は………ああう、…ああう。……洗う?
「手を洗うのか?」
「うん」
またペコンと頭を下げて頷く…。
ああクソ、当麻だと解っていても可愛いな、これは!
…ってそうではない。
手を洗うだと?
トイレはどうしたんだ、コイツ。
「…当麻、手はいいがトイレはどうした?」
私はさっき確かに、当麻をトイレの中に残して、そこで待つよう言って離れた筈だが何故当麻が洗面所に出てきている?
待てなかったのだろうか。
いや、ではコイツまさか……。
「おわったー」
「終わったって…」
やはり、まさか!!!!
と思って慌ててトイレを覗いたら、便器の前に洗面器が裏返しに置いてあるのが見えた。
どうやら風呂場から持ち込んだもののようだな
…という事は…。
「当麻、お前1人でしたのか…?」
「うん!」
おおおおお、何だ、…あ、当たり前のことなんだが、当たり前だと解っているんだが…これは…!!
「…えらいな」
「うん」
にへって笑った…!
か、可愛い…!
これは……可愛すぎるだろう…!
しかしおかしいな、私には妹がいるし、歳もそれなりに離れているのだが、皐月に対してはあまり可愛いと思った事はなかったのだが…
自分も子供だったからだろうか。
それとも皐月は可愛げのない子供だったのだろうか。
まさか当麻が特別可愛い子供と言うわけでもないだろうし…
…………そうか、姉のせいで”女”という生物が既に恐怖の対象だったのか………。
ってそうではない。
そんな感慨に耽っている場合ではない。
手を洗うんだったな。
「…そうだな…」
洗面台は便器と違って高さが足りても水を出せねば何にもならんからな。
「よし、当麻。手伝ってやろう」
「んー?」
言ってる意味がよく解らんか。
いやしかし実際どうしたものかな。
脇の下を支えるのは、さっき伸に散々怒られたから、やはりやめた方がいいのだろうか。
だとしたら本当に抱きかかえるしかないか…。
「当麻、……おいで」
ええっと、伸はどうしていた…?
確か尻の下を支えてとか言っていたような…。
それでなるべく身体に子供を寄せるとか言っていたような…?
……愚図るか?どうだ…?
「ったー」
……喜んでるのか。
何が気に入ったのかよく解らんが、まぁ喜んでいるのならいい。
ふふ…満更でもないな。
「当麻、手は届くか?」
「あい」
「よし、じゃあ水を出すぞ」
「あい」
あああ、それにしても本当に可愛いな。
何だか甘い匂いもする。
それに何だ、小さいとは思っていたが、それでもそれなりに尻に肉はあるものなんだな。
何と言うか「ぽたぽた」と「ぽちゃぽちゃ」の中間のような触り心地だ。
…うむ、気持ちいいな、これは。
「たー、たー」
何だ、お前も楽しいのか。
尻がもちもちだな。
子供の尻はどれもこうなのだろうか。
覚えていないな……まぁ皐月は抱っこせんかったからな。万が一 泣かせると(姉が)怖いし。
しかし本当に気持ちいいな。
子供だからだろうか。
それとも実は小さく見えて当麻の尻もこうなのか…?
……気にはなるが、流石に普段、触るわけにもいかんからなぁ……。
「たーあ」
「そうかそうか、当麻、楽しいか」
「たーっ」
「よしよし、いい子だ…………、…っっ!!?な、ナスティ、いつからそこに…!!!?」
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洗面所で幼児のお尻をてちてちする姿を見られる征士。
しかもパンツ穿いてないから直触り。