時に野を往く
震える手でスラックスの前を寛げて取り出した征士のモノは既に熱を持ち、怒張していた。
それを心底不思議そうに見つめる当麻を、征士は一度苦笑いしてから抱きなおして膝の上に乗せる。
「……なに」
「それは此方の台詞だ。…何がそんなに不思議なんだ」
形のいい鼻先にちゅっと口付けて聞くと、当麻の頬が一気に赤くなり、恥ずかしさから逃げるように視線が逸らされた。
「だって、その………征士の、……大きいから……その、…」
それでもぼそぼそと続けられる言葉に、耳を寄せて何とか聞き取ろうとすると今度は首に腕が回されきつく抱きつかれる。
「…その、……こんなん、入んのかなって……!!」
言われて驚いたのは征士だ。
彼は今、何を、言ったのだろうか。
抱きついてくる体を少し離して顔を覗き込み、そして目をじっと見る。
青い目は今度は逸らされなかった。
「……当麻」
「……………………………なんだよ」
「その、…いい、……のか?」
「………何が」
「わかっていて聞くな」
「そっちこそ」
「…………………………いいんだな…?」
確かめるように聞く。
照れたように頷きが返され、それを合図にまた唇を重ね、舌を絡めた。
年代物のソファに組み敷かれた当麻に、征士が覆い被さっていく。
2人の下に敷かれる形になった白無垢がさらりと音を立てて皺を寄せたが、それに構う余裕は彼らにはない。
圧し掛かるように体重をかける征士の身体に当麻のモノが圧迫され刺激を与えるが、シャツ越しではもどかしい。
擦られる箇所が脈打つたびに、じくじくと痛む。
「征士、……脱いで」
「いやだ」
直接肌を求めて言ったが、それは間もなく断られる。
言い草はまるで子供のようなのに、その声には随分と艶が含まれていた。
それに聞き惚れていると首筋に濡れた感触とチクリとした痛みが走る。
「……あ、ん……っ」
そのまま征士はいつものように当麻の胸に懐き、だがいつもよりもずっと肉欲も露わに赤く誘う箇所に唇を寄せる。
優しく唇で食まれ、濡れた舌で突付かれ、舌全体で舐められ擦られると当麻が甘い声を漏らした。
恥ずかしいけど、気持ちいい。
そんな甘い痺れから逃げたいのに、意に反して腕は征士の頭をしっかりと抱き寄せてしまう。
「シャツを脱ぐには当麻から離れなければならない。だから、嫌だ」
一時も離れたくはないのだと自分を見上げてくる紫の目は雄弁に語っている。
その視線だけで、艶やかな低音だけで甘い痺れは走るのに、身体は更に何かを欲しがり直接の温もりを求めてしまう。
だから当麻は必死に征士のシャツに手を伸ばし、そのボタンを外し始めた。
下の方は手が届かないために征士自ら外してくれたが、やはりシャツを脱ぐ気は本気でないらしい。
肌蹴られたシャツから見えるのは厚い胸と、鍛えられきれいに並んだ腹筋だった。
そこに当麻は自ら身じろいで先走りでぬめる先を寄せ、肌を味わうように腰を揺らした。
征士もそのぬめりを感じたくて身体を動かし、当麻の先端を擦る。
「…あぁ、……ん、征士、…キモチィ…」
「ああ、私もだ。……こんなにも濡れているのだな。…とうま、…可愛い、………可愛い…」
うっとりとした声で囁かれ、更にぬめりは増す。
その熱を確かめるように征士の手がソコに触れ、全体を優しく包み込んで擦り上げ始めると当麻の腰が震えた。
それが嬉しくて更に強弱をつけて煽る。
すると征士のモノの先に当麻の細い指が触れた。
身長差のある2人だ。幾ら必死に手を伸ばしても届かないのだろう、当麻を気遣って征士が体勢を変えると、
ソコに当麻の細い指が絡みつき、同じように擦り上げ始める。
「ん…ん、……あぁ、……あん、……ああ、…せいじ…」
漏れる声が愛しくてまた口付ける。
最初に交わしたよりもっと激しく絡む舌は濡れた音を立てた。
今まで互いを思って一人、熱を諌めていた。
肌に触れる事だってあった。だから手の感触は知っている。布越しとは言えソコに触れた感触も。
だが実際は想像などよりもっと、ずっと熱くて優しくて、そして官能的だった。
それに酔い、全てを飲み込んでしまうような快楽の中で2人は激しく互いの熱を高めあう。
何度も角度を変えて交わされる口付けは次第に苦しくなり、どちらからともなく唇が離れ、それでも互いに離れたくない気持ちから、
頬や耳元に唇を寄せあう。
「せいじ、」
激しくも甘い快楽に揺られながら当麻が小さく呼んだ。
征士がそれに耳を傾けると、小さな、聞き漏らしてしまいそうな小さな声で当麻が囁いた。
欲しい、と。
少し驚いて征士が当麻を見ると、青い目が恥ずかしさ以外で濡れている。
「その……本当に、いいのか?」
欲しい。確かに征士だって当麻が欲しい。
だがそれは容易なことではない。
幾ら頑丈だとは言え、受け入れる当麻の負担が大きいし、何より傷つけてしまう行為だ。
だから征士は躊躇った。
すると当麻が腰を揺らし握ったままの征士の手の中で誘うように揺らめいた。
まだ子供の筈なのにその表情は酷く淫らで綺麗で、なのにどこか神々しささえある美しさを持って征士を誘う。
赤く塗られた唇が再び艶かしく開かれた。
征士が欲しい、と。
「…とうま、」
「お願い、……俺の中に、……征士を、…ちょうだい」
甘い声に征士はくらくらとした眩暈を覚えて、その淫らに誘う唇を再び塞いだ。
小さく、肌触りのいい尻を撫でられると当麻の肌が粟立つ。
征士の指がその硬く閉ざされた箇所を探り、入り口で一旦動きを止めた。
微かに反応したそこは侵入を望み、待ち焦がれたように何度もひくついて征士を誘う。
「……辛くなったらちゃんと言うんだぞ…?」
念を押すようにかけた声には、頷きで返された。
それを確かめてゆっくりと指を差し入れる。
ナカは想像以上に熱く狭かった。
肉の感触を確かめるように中で指を動かせば、当麻がぴくりと反応する。
「…………ぅっ…」
聞こえた呻き声に征士が気付いて見ると、それを隠すように当麻がしがみ付いてくる。
首に回された腕は震え、顔は征士の首元に埋めて必死に堪えているのが解った。
ふと視線を向ければ当麻のソコが萎え始めていた。慌てて前にも刺激を与えると再び熱を持ち始め、そして中が少し解れる。
なるほど、こうすれば良いのか。そう理解した征士は前と後ろを同時に攻めた。
根気よく続けていくと、首に回された腕は相変わらず震えているし抱きついたままの表情は解らないが、兎に角中の肉は随分と柔らかく解れ、
既に指が3本入るまでになった。
その感触を楽しむように征士が指で中をかき混ぜ続けると、当麻の身体がふるりと震えた。
「せい、じ………、……おれ、もぅ、…イきそう…」
そう言って当麻が限界が近いことを訴えてきた。
だがそれは征士も同じだ。
相手が欲しくて欲しくて堪らない。
その肉を求めたい。
甘い肢体の奥まで知り中の熱を知り、その全てを貪りつくして魂まで手に入れたい。
出会ってからずっと、望み続けていたのはそれだった。
ゆっくりと中から指を抜き去り、穿いたままだったスラックスを動きやすいように少し下げると、当麻の後ろに自身をあてがった。
「……いくぞ」
ゆっくりと、傷つけないように優しくゆっくりと侵入を始める。
指とは違った圧迫感に当麻がまた呻き声を漏らした。
それに征士は何度もキスをしたり、前へ刺激を与えながらゆっくりと肉を分け入っていく。
溶かしそうに熱い肉が絡みつく感触を味わいながら、ゆっくりと。
時間をかけて全てを納めきった征士が当麻の顔を見ると、額には玉のような汗が浮かび、眉間の皺が深い事に気付く。
「…当麻……?」
やはり初めての行為で挿入はまだ早かったのかもしれない。
女の身体ではないから尚更だ。
征士だって勿論、当麻が欲しい。
だが当麻の身体の方が大事に決まっている。だから今日はやめよう、そう告げようとした。
「当麻、やっぱり」
しかし言葉を遮るように当麻の手が征士のシャツを掴んだ。
握り締める指は関節が白くなるほど強く握り、潤んだ目は今にも涙が零れそうだ。
赤く濡れた唇が震え、そして声にならない声で、やめないで、と当麻が囁いた。
「しかし当麻、」
「俺、……こういうこと、初めてだから……征士と、ちゃんと最後まで……シたい」
愛しさが溢れ、当麻の腕をソファに押さえつけると、征士はその唇に何度目か解らないキスをする。
体勢が変わった事で繋げた箇所がまた痛んだが、それでも当麻は必死に舌を絡めて応えた。
絡みつくナカはとても熱く、そしてあまりにも魅力的だった。
ゆっくりと引き抜き、そして抜けきる直前でまた奥まで侵入する。
根元まで入ると馴染むのを待って、そして再びギリギリまで抜いていく。
それを何度か繰り返していると途中で滑りがよくなった。
どこかが切れてしまったのだろう。
だがもう止まれなかった。その滑りの助けを借りて征士の動きが激しくなっていく。
「あ、あ、あ、…あぁ、…あ、あ、…あ、…あぁ、あっ」
最初は苦しそうだった筈の当麻の表情もいつしか恍惚としたものになり、漏らす声にも甘さが混じり始めた。
そして自らも腰を揺らし、ナカの征士を締め付けていく。
「あ、あ、あ、…せい、じ、……あ、あ、あぁっ…は、…あぁ、ん…あ、」
「…………っ…」
荒く吐かれる息。
切なげに漏らされる声。
肉を打つ音とソファのスプリングが軋む音。
そして敷かれた白無垢が擦れる音だけが静かな部屋を満たしていく。
「あぁ、ああ、あ、は、あ、…や、んっ…あっ、あぁ、あ、あぁ…あぁっん、あぁ、あぁ、…あ、…あっ………!!」
「…ふ…っ…!」
お互いに初めてだから、どうしていいのか解らない。
だから本能に任せて激しく絡み合った。
欲しいと思う気持ちだけを頼りに、互いの肌を求め合った。
薄く開かれた唇から覗く濡れた舌はとても扇情的で、征士はそこに口付けると更に腰の動きを早めていく。
音を立てて絡み合う舌と、激しく絡み合う下肢に限界はもう近かった。
髪を飾った白い花を散らしながら当麻の細い肢体が征士の逞しい身体の下で強く揺さぶられ、白い喉を仰け反らせる。
「あ、あ、あ、あ、……あぁっ…あああっ……あ、…………、…………!!!!」
「……とうま…!」
声に出来ないほどの快楽を味わい、2人の腰が震えると同時に熱を放つと、ソファに横になったまま、
身体を繋げたままどちらからともなく満足げな息を吐き、甘えあった。
これからも続く、幸せな日々を思って。
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新婚初夜。