夏祭り



それにしても久し振りだよね、みんなでここのお祭りに来るのってさ。
いつ以来だろう？最後って確か……高校生の時だっけ？卒業してからだと秀がもうお店に入ってたから…
違ったっけ？あれ？覚えてないな…
どうだったかな、確か…………あぁ、そうだ、征士と当麻がまだ付き合ってなかったから高校生の時だ、やっぱり。

懐かしいなぁ…
あの時は本当、大変だったよ。
携帯電話なんて持ってなかった頃だからさ、集合場所と時間を決めようと思ったのにその前に秀が食べ物の屋台目掛けて出てっちゃうし、
そしたら当麻もどっか行っちゃうし征士は征士で当麻を探しに行って自分が最終的に捜される立場になるし、
遼は気付いたらはぐれてるし………
本当、あの時ちゃんと時間や場所を気にしてたのが一番年下の純だっていうのが情けなかったよ、僕は…


でも今回はもう大人だし大丈夫だよね。
純は来れなかったしナスティも帰国できなかったけど5人は集まれたし、それに今回は秀の子供も来てるからね。
あの時の純よりも子供がいるんだもの、幾ら何でも、みんな、大丈夫だよね！




……って思ってたのに…
何で携帯鳴らしてるのに気付かないの、秀！
何で携帯の電源が入ってないの、当麻！
征士も征士だよ、当麻が持っているし仕事の電話が入ったら嫌だからって、何で携帯を家に置いてくるんだよ！
当麻の携帯が普通に機能してるかどうかなんて、ちょっと考えたら結果判ってたでしょうに！！
…っは！もしかして確信犯！？当麻と2人きりになるための、確信犯！？

っもーーーー！！！
ていうか、何でさっきまで一緒に居たはずなのに遼がいないの！？
これじゃあの時と同じパターンだよ、もう！

…って愚痴ってても仕方がないしね。
しょうがない、みんなを探しに行くかぁ…


ま、そうは言っても秀と当麻は大体居場所が判りやすいんだよね。
美味しそうな匂いがしてる屋台に、先ず入ってる筈。
あの大食漢2人が夕方の6時に綿菓子や林檎飴なんてお腹の足しにならないものを食べるわけがないもの。
それを考えると秀より当麻の方が見つけやすいかな…？
タコヤキはあの子、地元で食べ慣れてるからこっちで態々食べないんだよね。（旨くないとか文句言って）
でも美味しい匂いは好きだろうから、……うん、きっとヤキソバかな。
先ずはそこを探そうかな。

………って、あれ？
あれ？ねぇ、キミ、秀の息子の……そうだよね、うん。どうしたの？お父さんは？

………………………え、…はぐれたの…？

え、ど、どうしよう。お父さん、探さなくちゃ。
え？いつものこと…？そ、…そうなの…？
……………………………。
………うん、お兄ちゃんも今ちょうどキミのお父さんたちを探してるところだからさ、うん。一緒に行こうか。
はぐれないように手、繋ぐ？
うん、そうしよう。

はーぁ……秀ったら何してんの…
ていうか、いつものことって…アイツ、毎回お祭りの度に家族とはぐれちゃってるのかな…頭痛い…


それにしても見つからないなぁ………
ん？どうしたの？
…え？…………あ、…っとーま！
当麻！キミ、何してるの！
ヤキソバ、じゃないよ！もう！！
征士は？一緒じゃなかったの？

…へ？「射的の所で征士が動かなくなった」？
何で…………ねぇ、当麻、まさかと思うけどキミ、射的の景品見て、面白そうとかそういう発言、しなかった？
………へぇ、ゲーム機型の、消しゴム…そう。
そうだね、明らかに紛い物だね。デカイだけで邪魔だしね。
で？何、キミはそれを面白そうって言っちゃったの。

この、馬鹿！
キミがそういう事を言ったら征士がムキになって取ろうとするの、解ってたでしょ！？
「解らなかった」！？何で、アイツがそういう性格だってバレバレでしょうが！
違うよ、キミが欲しそうにしてたら征士は何でも叶えてあげようとしちゃうの！そういう性格なの！

あーもー、兎に角そこ、行こう！どこの射的屋！？
ほら、当麻も手ぇ繋ぐよ！
「恥ずかしい」じゃないよ！はぐれ防止だよ！
僕と手を繋ぐのが嫌だったらこの子と手ぇ繋いで！
全く……ごめんね、このお兄ちゃん、ちょっとアホなんだよ。
煩い！アホなんだからアホって言って何が悪い！！


……？ねぇ、当麻。征士いないみたいだけど…？
あの、すみません、ここに居た物凄い美形の金髪男、どこか行きました？
えぇ、…えぇ……そうですか、景品を手に入れた後で慌てて…そう…ですか……ありがとうございました。
………当麻、キミ、征士に何処に行くか伝えずにその場を離れたの…？
何でそういう事するの！
征士、今日は携帯置いてきてるんでしょ！？っもー！！！
よし、こうなったら食べ物の屋台を片っ端から回るよ！
違う！征士が食べそうなものじゃなくて、キミが食べたそうな物を探すんだよ！
だから違う！君の腹具合の事じゃなくてソコに征士がいる可能性が高いからだよ！！

あーもう、くらくらしてきた…
って征士、いた！！！！
この状況で暢気に唐揚げの屋台に並んでるとか…！

征士！せいじー！！
良かった、征士も見つかった…ってちょっと！呼んだ僕を無視して当麻にまっしぐらにならないでよね！
ホント、頼むよ………
あーそうだね、良かったね当麻。巨大な消しゴムだね。
……はーぁ…

って、秀！秀もいた！！
ほら、お父さんだよ！

もう！キミ、幾らなんでも子供とはぐれちゃ駄目じゃないか！
「探してた」ってのは信じてあげるけど、だけどその風船とか林檎飴とか、何なの。
…え？…あぁ、この子にね。
いや、全然泣いてなかったよ。寧ろ冷静だった。
この子、奥さん似か、完全な反面教師だね。

良かったね、お父さん、いて。
…あー、やっぱりお父さんの方が良いか。
きゅーって手ぇ繋いじゃって。あーあ、可愛いなぁ。
いや、要らない。当麻、キミの手は要らない。
あの子と違って大きいし指長いし骨ばってるし、それに何より征士の目が怖いし。


さて、後は遼かぁ……
遼を探すのは結構骨が折れるんだよね。
予測できないんだよなぁ。
人込みが苦手に見えてこういう場合は喜んで溶け込んでる時もあるし、かと思ったら人に酔って会場の本当に端の方で
座り込んでる事もあるし………
あぁ、しかも大人になってからはそれこそ世界のあちこちに行って行動力が大幅にアップしちゃったから、…困ったな………

遼がいそうな場所、どこかなぁ。
「金魚すくい」？あぁ、そうだね、有り得そうかも。綺麗だなぁとか言って。
うん？あ、そっか金魚掬っても世話できないからやってないってのも一理あるね。
だとしたら……ヨーヨー掬いか。そっちの方が確率高いって言われるとそうかも。
いや、ベビーカステラはないんじゃないかな。
ソレ、キミが食べたいだけでしょ、秀。
息子がって言うな。見てみなよ、首横に振ってるじゃない。ったく……しょうがないお父さんだねぇ。

うーん、……境内のほうかなぁ…？
それか最初に別れた場所とか……って遼は気付いたらはぐれてたから、どこで別れたか解らないんだけどね。
困ったなぁ…………


って、何！？え、ふ、フラッシュ！？

っあー！遼！！
いつから後ろに居たの！？
えぇ！？ずっと！？嘘でしょ、だって僕ずっと探してたんだよ！？
それに皆も気付いて……なかったよね、やっぱり。

うん、いや解ってるよ、キミが写真家だってのは。
あぁそっか、動物撮ろうと思ったら気配消して空気に馴染まなきゃいけないんだ。

……って僕らは野生の動物と同じ扱いなの……？



ま、いいや。
みんな揃ったし……誰かさんたちのお陰で食べ物も手に入ったし。
じゃあラムネでも買って、どこかで食べようか。



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バラバラだとある程度大人ですが、5人揃うといつまでも気持ちは子供の頃に戻るんじゃないかなとか。
そして永遠の苦労性、毛利伸。