オメデトウの日の風景3
「うわー……当麻、お前、何だよこのケーキのでかさ……」
「すごいなぁ……こんなの、売ってるんだな」
「売ってるって言うよりオーダーしたって言うほうが正しいけどな」
「凄いねぇ………大きさもだけど、高さも……」
「私も箱だけ見た時に驚いたが、実物を見るとまた迫力が……」
「これ、間にめっちゃフルーツ入ってるんじゃねぇの?」
「入れてもらいまくった」
「あぁ、それでこんなにかさ高くなってるのか」
「征士は生クリームがあんまり好きじゃないからな。でもケーキはやっぱり甘い方がいいし、それでなるべくフルーツを沢山入れてくれって頼んだんだ」
「だからってお前、何もこんな………どーすんだよ、これ残ったらお前ら2人で処理すんだぜ?」
「バカヤロウ、残すなよな。人が折角頼んだものを」
「それはそうなのだが……」
「まぁ頑張って皆で食べきろうか」
「そう言いながら俺の顔を見んの、やめてくんねぇ?」
「キミと当麻が頑張らなくて誰が頑張るのさ」
「あのなぁ、俺ぁ最近娘からタヌキ腹って言われてんだぜ!?親父の沽券にかけてこれ以上、太れないわけよ!」
「確かに秀を見るとサモアの人たちを俺、思い出すな」
「サモアって………遼……」
「あぁ、そうだな。まぁ俺の誕生日の翌日に生まれた7歳上のレスラーみたいだと思えばカッコイイんじゃないか?」
「当麻……てめぇ…」
「………ねぇ、誰のこと?」
「私は知らん。秀、誰のことだ?」
「知らねぇよ!でもどうせ嫌味だっつーんは解ったぜ!」
「え、そうなのか?当麻」
「別に嫌味は言ってないけど?」
「嘘吐けこのタレ目!」
「ねぇそういうのはいいからさ、早く食べちゃおう、ケーキ」
「そうだな。あ、このプレートは勿論、征士が食べた方がいいよな」
「そうだね。………………っぷ」
「笑うな!」
「いや、笑うなっつーけどよぉ……」
「”せいじくん、39さいのおたんじょうびオメデトウ!”だもんねぇ…」
「なぁ当麻、お前、このケーキってネットで注文したのか?」
「いいや、店に出向いて頼んできた」
「………どのツラ下げて行ってきたんだよ、お前…」
「まぁこれも征士への愛情と思えば普通じゃないか?」
「それを普通と捉えられるキミの器の大きさに僕は驚くよ、遼」
「えっ」
「いや、遼の言葉で正しいぞ。俺の愛情だ。ほら、征士。食え」
「う、…うむ」
「まぁ店のヤツはお前の顔、知らないから大丈夫。お前が恥をかく事はないって」
「ああ……」
「じゃあ早速切り分けるよ」
「おいっ伸!5等分だろ!?」
「そうだよ?平等に5等分だよ」
「平等じゃねぇ!ついでに言うと等分じゃねぇ!」
「何が」
「お前、ここだけ妙にデカく切って…って、あぁ!そこもデカく切りやがったな!」
「だから”平等に”って言ってるだろ?」
「そのデカい場所、絶対、俺と当麻の分のつもりだろ!お前、俺のさっきの悲しい話聞いてたのか!」
「もう煩いなぁ…個人が食べれる量とか胃の状況とか、色々あるでしょ?そういうのを含めてこその”平等” だと僕は考えてるんだよ」
「おい、ならば何故今、そこも大きく切った」
「え?あぁ、これはキミの分だよ、征士」
「待て、それこそ待て!私はあまり甘いものが得意ではないんだぞ…!」
「そのキミの為にフルーツ沢山のケーキを、キミの大事な恋人が注文してくれたんだろ?つまりこれは他の誰でもないキミの為のケーキだ。
その愛情をキミが、たっっっくさん受け取るのに僕は不平なんて零さないからね、さぁどうぞ」
「だったらナイフについたクリームまで皿にこすりつけるのはヤメロ…!」
「当麻の愛情、当麻の愛情」
「俺の愛情、俺の愛情」
「うぅ………っ」
「征士、食べないのか?」
「いや、食べる…………食べるのだが…」
「”だが”?」
「……結局お前ら、私の誕生日にかこつけて騒ぎたいだけではないのかと思い始めてきた……」
「んだよ、今更じゃねーか」
「!?」
*****
2012.06.01-2012.06.30までオープンしていた企画に参加したお話。
みんなで祝う誕生日。
夜はきっと10年前と同じように秀の鼾が大きくて伸がソファに移動して、遼はそのまま眠り続けるんだと思います。