おやすみの前に
「お風呂出たよー。次だぁれ?」
「おう、俺、俺。俺入ってねぇ」
「じゃあ秀が最後だね」
「え?遼、入ってなくね?」
「俺は帰ってからすぐに入ったよ」
「そーだったっけ?」
「お前がツマミ食いをして怒られている間に、遼は済ませていたぞ」
「えっそうなん?」
「うん。今日俺、帰りに水溜りにはまっちゃって…」
「水溜りなんかあったっけか?つーか帰りに雨、降ってなくね?」
「ほら、今朝見たやつだよ。昨日の夜の雨の残りの。今朝水溜り見てさ、みんなで気をつけなきゃねーって言ってたとこ」
「………あー!あれね!…え、遼、それにはまったんかよ…」
「…………………まぁ……」
「あんだけ朝、言ってたのに??」
「もう済んだことなのだから良いではないか。それより秀、早く風呂に入って来い」
「おうよ。…で、マジに俺、最後?」
「キミで最後だね」
「当麻は?」
「当麻ももう済ませた。私のあとだ」
「へぇ…つーかおい、コイツ寝てねぇか?」
「おきてる」
「………寝てるよね」
「おきてる」
「目、閉じてるよな」
「おーい、とーまー、お前、完全に寝こける前にベッド行けよ」
「だから、おきてる。テレビ、みてる」
「目を閉じていてどうやって観ているというのだ、お前は」
「おきてる」
「…………な、当麻、やっぱり寝てるよな?」
「おきてきいてる」
「おーい、とうまぁ」
「ほら、当麻の事はいいからキミもさっさとお風呂に行く」
「わーかってんだけどさぁ…何つーか……もちょっと」
「喋りたいんだよな、俺もその気持ち解る」
「遼も秀も、気持ちは解るがもうこんな時間なんだぞ」
「……う、うん…」
「なー、征士って厳しいよなー」
「きびしい」
「寝てる人間が何を言うか。お前はさっさとベッドへ行け」
「おきてる」
「3割起きて7割寝てるでしょ、キミ」
「おきてる」
「あー、駄目だコリャ、当麻、完全に眠りに入ってきてんじゃん」
「ほんとだ」
「だいじょうぶ、やれる」
「何やるってんだよ、ったく。………あー、んじゃあ俺も風呂入ってこよっかなー」
「そうしな。ほら、遼もそろそろ漫画片付けて」
「うん、そうだな。そろそろ俺も寝るかな」
「当麻、みなもう寝るみたいだから、お前もいい加減少しだけ起きて部屋に行くぞ」
「だいじょうぶ」
「……駄目だね、これ」
「駄目だな。……まったく。……ほら、肩を貸してやるから起きろ。おい、こら、凭れかかるな!自力で立て!」
「ありがとう」
「ありがとうではない!起きろ!こら!!おも…っ………くはないから、まだ良いが…!」
「あーもうそうなると駄目だね、完全に。じゃあ征士、当麻、任せたから」
「おい!」
「じゃあ俺、おさきに、おやすみー」
「おー、俺も風呂上がったらすぐ寝よーっと」
「そうだね、僕、先に部屋行ってるから」
「あいよ。んじゃ遼と征士と、…あと当麻は聞いてるかわかんネェけど、おやすみー」
「うん、おやすみ」
「うむ」
「じゃーなー」
「当麻、じゃあなではない、………あ、駄目だ、コイツ完全に寝たな」
「征士、階段気を付けてね」
「わかっている。では、…おやすみ」
*****
おやすみなさい。