赤信号1つ前



「征士、今何分?」

「8時35分だ」

「って事は……ここから全力でダッシュしてギリギリ40分の朝礼に間に合うくらいか……もう、早く変わらないかな、信号!」

「しーん、信号なんて決まった時間にしか変わらないんだから苛々したってしょうがないだろ」

「しょうがないって、当麻、キミよくそんな平然としてられるね!」

「だってたかだか朝礼に間に合わないくらいだろ?そんなもん、死ぬわけじゃないんだから、」

「その根性がいかんとうのだ、遅刻だぞ、遅刻。その辺を解っているのか」

「1回遅刻したくらいで何がどうなるって言うんだよ……」

「自分で自分が許せんだろう」

「ちょっとくらい自分を崩してみるのも大事だぞ?そうやって違う見方をや考え方を得たりするんだから」

「こんな時に屁理屈を言うんじゃないよ!」

「じゃあ言うけど、ナスティが友達ん家泊まりにいったくらいで寝坊したのはお前らだろ?それをカリカリされてもなぁ」

「違う!寝坊は秀のせい!」

「おーい俺かよ!!」

「お前が夜に見た映画を真似てカンフーなどで暴れなければもう少し早く眠れていたのだから、当然だ」

「カンフーって……ありゃ酔拳!」

「一緒でしょ、そんなの……大体キミ、部屋に戻っても煩かったんだもん!僕ぁ完全に寝不足だよ!!」

「伸、あんまり大きな声出さないでくれ…お、俺も実は寝不足で……」

「何で遼まで寝不足になんだよ」

「いや……その…」

「…………………………。さては遼、お前興奮して寝れなかったな?」

「…………………………うん」

「テンション上がって眠れねぇとか、子供みてぇだな、遼!」

「笑うなよ、秀。俺だって寝ようとは思ったんだけど………その、上手く眠れ無かったんだから……」

「ほら!秀の酔拳の影響が!」

「もーこの際そんなんどーだっていいじゃんか、過ぎた事なんだしよー…大体お前らも俺のん見て笑ってたじゃねぇか!同罪同罪!」

「キミねぇ…!」

「……あっ!な、なぁ!信号、変わった!」

「おっしゃ、んじゃ走るぜ!おら、当麻!走れ走れ!」

「面倒臭ぇ……って痛い!征士、引っ張るな!痛い!!」

「引っ張られるのが嫌だというのなら公衆の面前で抱き上げてやろうか!?」

「っちょ、…!そういうのんこそ、ヤメろよな!引っ張るな引っ張るな!走るから!!」

「あぁあ!つ、次の信号、点滅してる…!!うわあああああああ…!」

「とーま!諦めんなって!」

「だって無理だってこの距離じゃ。点滅して終わりに決まってるんだから、それなら赤信号の間に歩いて体力温存する方が合理的だろう」

「バッカヤロウ!それでも関西人か!点滅しようが黄色になろうが、逆側の信号が青になんネェ限りは渡れよ!横断歩道!!」

「アホか、全部の関西人が信号無視すると思うなよな」

「そうだぞ。それに交通ルール違反は感心せんな、秀」

「わああ、征士まで何歩いてるんだよ!間に合うかも知れないでしょ!?走って走って…!」

「守りに切り替えるための引き際は肝心だ」

「引き際ってオメーはまた……」

「…は、………はぁ、……はぁ…っ!お、俺ももう駄目だ…!カバンが重くて……!」

「ちょっと遼まで…!………あ、信号が……!」

「…………赤んなっちまった……」

「あぁああ、…最悪だよ…思いっきり走ってまだ間に合うかなぁ、朝礼…」

「伸は2年だから教室3階だからまだいいじゃねぇか…俺らなんて4階まで上るんだぜ……あぁー…何かもう、遅刻しても良い気がしてきた…」

「何を言っているんだ、秀。諦めるな」

「諦めるなって征士…お前、途中で当麻みてぇに歩き出した上に、引き際が肝心とか言ってたくせによくそんな…」

「何を言うか。青になった瞬間、全力で走るぞ」

「えぇ!?お前、まだ走る気かよ…!もういいだろ、遅刻くらい…!」

「良くないに決まっているだろう、当麻!お前の無遅刻無欠席記録が途切れる!」

「俺のかよ!せめて自分のにしろよ!」

「私の密かな今学期の目標は、お前の無遅刻無欠席だから仕方あるまい」

「勝手に人を目標に使うんじゃねぇよ!」

「あ、信号変わった!当麻、征士、急ごう!」

「っちょ、ちょっと遼、キミ、靴紐解けて……………って、あぁ!!」




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そして転ぶ遼。
授業の開始は8時45分から。その5分前に各クラスごとに朝礼があります。という設定。