PM4:20 商店街
「おばちゃーん、俺メンチカツねー。当麻は?」
「んー…俺はやっぱコロッケかなぁ」
「えええ、肉だろ、肉!」
「馬ぁ鹿、お前、肉屋って言ったらコロッケが旨いんだろうが」
「肉屋なのに肉食わねえでどうすんだよ」
「だからお前は浅いって言われるんだよ」
「んだと!?」
「コラ、キミ達何してんの!」
「うわあ!」
「おわっ!!!…し、伸かよぉ…ビビらすんじゃねーよ!」
「勝手にビビっておいて何て言い草だい。それより何?買い食い?」
「おう、腹減っちゃって。な?」
「うん」
「駄目だろ、こんな時間にそんなの食べちゃ。帰ってちょっとしたらすぐ晩ご飯なんだよ?ナスティが折角作って待ってくれてるってのに…」
「だって俺ら午後から体育だったし」
「体育?」
「そ。俺のクラスが5時限目で、秀のクラスが6時限目体育だったからさぁ、腹減っちゃって。ココ、オススメの店」
「あぁ、そう言えば今日、火曜日か…」
「そー!だから、まぁなんてーの、帰るまでの繋ぎ?」
「繋ぎって…ちょっとくらい我慢しなよ」
「無理無理、俺ら成長期だし。な、当麻」
「うん」
「……確かに最初に会った頃より当麻は背が伸びたし、秀も大きくはなったけど…横に」
「ぅおい!どういう失礼な言い方だよ!当麻、言ったって言ったって!俺のこの身体の構造を!」
「そうだよ、伸。秀は太ったんじゃないって。関取的なアレだから」
「せめてソコはレスラーだろーがよ!」
「あぁ……タイガーマスクとか?」
「2代目でオネガイシマス」
「三沢か」
「言ってなよ……ホンット、キミらってばそんな事ばっかり言って…」
「それより伸もどーよ?」
「えぇー…?……確かにちょっとそそられる匂いだけどさぁ…」
「じゃあ食えばいーじゃん」
「でも僕はキミらと違って人間の胃だからね、コレ食べちゃうと晩ご飯がちょっと入りにくくなるかなぁ」
「どーゆー意味だよ!」
「まあまぁ、落ち着けって秀。そういう伸にはミニコロッケがオススメ」
「ミニコロッケ?」
「通常の3分の1サイズが3つ入って100円」
「おお、流石当麻、リサーチ済みかよ」
「ついでに言うと試食も済んでるぞ」
「…キミ…買い食いの常習犯だね」
「この商店街のは大概食った。で、どうよ、ミニコロッケ」
「うーん…確かにそれくらいなら…ああ、誘惑に負けそう…」
「負けていい戦もある」
「言うねぇ、軍師様」
「アハハ……ああ、呆れてモノも言えない…でもなぁ…結局3つ食べたら通常サイズと一緒なんでしょ?」
「3つあるから分けて食えばいいだろ。何も一気に食わなくたっていいんだから」
「俺1個食ってやってもいいぜ!?」
「素直にチョウダイって、いいなよ…当麻もいる?」
「いや、俺、頼んだのが同じ普通のコロッケだから流石にいいや」
「何してんだよ、3人揃って」
「あ、遼」
「ちょうどいいところに来た。ね、キミ、コロッケ食べない?」
「コロッケ?うーん…食べたいけど当麻たちみたいな胃袋してないからなぁ…」
「俺はちょっとお前らの意識を改めて確認したくなった」
「おう、俺もだ」
「僕は寧ろキミ達が僕らと同じ胃袋だと思ってる事の方が意外だよ。…あのさ、ミニコロッケ買うんだけど、1つ要らない?」
「あ、そういう事か。だったら食べる」
「何をしている」
「ッギャ!」
「出た!説教爺!!」
「誰がジジイだ!……何だ、買い食いか?」
「気配消して人の後ろで急に喋るなよな……買い食いは買い食いですけども」
「征士も食べない?ミニコロッケ」
「いや、やめておく」
「えー!?ナンデだよ、ここの、旨いんだぜ!?…って当麻が言ってた」
「お前はまた……」
「成長期、成長期」
「成長期でなくてもしょっちゅう食べているではないか」
「本当に食べないのか?征士」
「ああ。帰ったら晩ご飯だろう?折角作ってくれているのに、きちんと食べないのは失礼に当たる」
「つってもよー、俺ら、成長期だし」
「秀は絶賛、横に、だけどね」
「伸!お前、何か俺に恨みでもあんのかよっ」
「ヤだなあ、親愛を込めてるじゃないか」
「お前の場合はトゲしかねーよ!針の筵で簀巻きにしてきてんだよ!」
「それでも包まれてるだけ優しいじゃないか。何もないより何倍も暖かいだろ?」
「出血過多で寧ろ寒ぃよ!」
「仲いいなぁ…」
「そうかぁ…?いや、仲はいいんだろうけど…俺だったら伸のああいう標的になるのはイヤだな」
「私もだ」
「そう?」
「……遼って時々ヘンだ」
「うむ」
「え、」
「あ、凄い意外な顔した」
「………2人の方が俺、変な時多いと思う…」
「遼…何気に物凄く失礼だな。私と当麻を一緒にするな」
「こっちの台詞だよ、この奇天烈斉様」
「なんだ、そのキテレツサイというのは」
「”我輩の好物はコロッケなりー”」
「……?」
「…いや、忘れていい。て言うか忘れて、マジお願い。それより征士、ほら」
「だから食わんと言っただろう」
「でもホント、旨いんだって。ホラ、1口くらいならいいだろう?なぁ、ほら、あーん」
「む……しつこいな、お前も」
「ここのコロッケ、本当に美味しいんだって。ホラ、1口だけ。あーん、ほら、あーんってして」
「………………しょうのないヤツだな………。………。………ああ、確かに旨いな」
「よっし!ハイ、征士も共犯ー」
「おっ!当麻、でかした!コレで全員買い食いな!」
「イエス!今日の晩飯でナスティに何か言われてもお前らも同罪だからなっ」
「あーあ、…征士、キミ、まんまとヤラれたね」
「……………っっっ」
「そんな悔しそうな顔しなくてもいいじゃないか。旨かったんだろう?」
「…確かに旨かったが……!」
「何か駄目なのか?」
「……あんな風にハイタッチまでしてあからさまにアイツラを喜ばせたのが、腹立たしくてならん…!」
「アハハハ、でもいいじゃないか。…それにしてもホント、あの2人仲いいなあ」
「遼、お前、先ほどは伸と秀に向かって言ってたのと同じ事を言っているぞ…」
「しょうがないよ、遼からすれば何でも仲が良く見えるんだから」
「……?…??」
「いや、純粋でいいねってコト」
「それより今日の晩ご飯何だろうな」
「俺、カレーがいいなぁ!」
「メンチカツやコロッケ食べながらよくそんな事考えられるね、キミたち…」
*****
こういう日に限って帰ったらコロッケ。
征士は当麻の食べかけコロッケを、当麻の手であーんしてもらって食べました。