木の上
「とーまぁー!おーい、当麻ぁー!」
「んだよ、……うるさいなぁ…」
「寝てるだけならコッチ来てちょっと人助けしてくれよー!」
「あぁ…?…………なに。何で3人仲良く木の下に集まってんだよ」
「秀兄ちゃんと遼兄ちゃんと一緒にボールで遊んでたんだけどさぁ…」
「純のボールが…ほら」
「んー…あぁー…あれはまた…えらい高いトコロに引っ掛かったナァ」
「だろ?木、揺らしてみても全っ然取れなくってさ」
「うん」
「で、当麻」
「何だよ」
「登って取ってきてくんねぇ?」
「はぁ!?」
「当麻、高いところ得意だよな?」
「いや、得意っていうか…」
「天空の鎧、飛べたしな」
「うん」
「いや、それとこれは随分違わないか?」
「何だよ、可愛い純の為に登ってやろうって気になんねーのかよ、お前は」
「どうにかしてやろうとは思うけど、何で俺?」
「え、……当麻、身軽だし」
「だからって俺が子供の頃に木登りしてたと思うか?」
「………………しない、かな…当麻兄ちゃん、木、登るより本読んでそうだし」
「流石だ、純。俺をよく解ってる」
「でも登れるだろ?」
「遼、俺の話を聞いてたか?」
「でもよー、俺、無理だったし」
「ああ、その重さじゃな」
「テメェ…何でそういっつも一言多いんだよ………………いや、まぁそうだったんだけどさぁ…」
「遼は?遼の方こそ、こういうの得意かなって思うんだけど」
「俺は無理だよ」
「遼兄ちゃん、さっき登ろうとして落ちたんだよネ」
「あぁ……不器用だから?」
「不器用だから……ゴメン」
「謝る必要ねーって。な?だから当麻、登ってくれ」
「登ってって…………そうだなぁ…最初のあの枝に届いたら何とかなる、かな…?」
「あそこまで登れネェ?」
「無理無理、俺、そもそもそんな握力も腕力もないし」
「じゃ、秀が当麻を肩車してみたらどうかな」
「お、遼、名案」
「いいねー。よし、秀、しゃがめ」
「おうよ」
「…………どうだ?」
「駄目だ…あとちょっとなんだけど……秀、お前もちょっと背伸びできないか?」
「無理言うなよ……ちょ、どうにかなんねーかな…」
「そんなところで何をしている」
「あ、征士」
「おお、ちょーどイイとこ来た!征士、バトンタッチ!」
「何だ…?当麻を肩車すればいいのか?」
「そ。よし、征士、いいぞ。…おおー…秀よりちょっと高くなった」
「どうだ?当麻、届きそうか?」
「んんー……あ、でもちょっとやっぱ駄目だ…」
「困ったなぁー…」
「一体何がしたいのだ、お前たちは」
「うえ」
「上?…ああ、なるほどアレをとりたいわけか…。当麻が普通に登ればいいのではないか?」
「だから何で高い所が平気、イコール、木登りが得意って思うんだ、お前らは」
「秀がやっても無理で征士でも無理ってなると難しいかな…」
「うむ………秀が踏み台になって私がその上に乗って当麻を肩車するのはどうだろうか」
「おいおいおい、俺、幾らなんでもお前ら2人分の体重なんて支えらんねーよ!骨折れる!」
「じゃあ俺も一緒に台になったら大丈夫かな?」
「いや、それなら征士と秀が台になって遼が俺を肩車した方がいいだろ、体力的に」
「うむ。それもそうだな。当麻、遼のほうにいけ」
「はいよ。…遼、いいぞ。…………遼?」
「どーした?遼」
「………ごめ、ちょと、…た、立てない…」
「え、とーま軽いだろ!?」
「そうなんだけど……よ、……ふん、…よい、っしょ…!」
「うわあああああ!」
「あぶねー!うおっ!ちょ!!」
「当麻、危ない!」
「わぁ……っ!!…………サンキュー、征士……怖かったー…」
「ゴメン、当麻……支えきれなかった…」
「まぁ…当麻、怪我してねーんだろ?気にすんなよ」
「ソレをお前が言うのかよ…まぁいいけど」
「ちょっと、さっき悲鳴が聞こえたけど何してんのさ」
「あ、伸」
「どうしたの?何か遼、落ち込んでる?」
「………いや…」
「気にすんなって。ちょっと当麻肩車したら失敗しただけだし」
「え、2人とも怪我してない?大丈夫?」
「うん」
「ああ、大丈夫」
「ならいいんだけど。…で、何してたの?」
「木の上にボールが引っ掛かったらしい」
「上?ああ、ホントだ。……もしかして当麻を登らせようとしてたの?」
「そーなんだけどよ、全っ然上手くいかねーんだよ」
「秀で駄目、征士でも駄目。で、2人に台になってもらって俺が当麻を肩車しようとしたけど…失敗して……」
「そうかぁ……アレ、純の?」
「うん、そうなんだけど……お兄ちゃんたち、別にいいよ」
「それは駄目だろ。ちゃんと取ってやるから」
「マジ、とーまって俺らにはアレな癖に純には優しくね?」
「うるせーな」
「ホラ、そこ。つまんない言い合いしない。…そうだねぇ…じゃあ、さっきの案で、僕が遼を支えるってのはどうかな」
「あー、なるほど。やってみっか!」
「そうだな。5人でやれば何とかなるかも知れん」
「解った。じゃあ当麻、今度こそ大丈夫だと思うから…」
「はいはい。よいしょっと…」
「遼、ゆっくりだよ、ゆっくり…ゆっくり…………」
「お、立った立った!」
「クララが立った!」
「そこ2人、ホント、それ以上つまんない事言ったら秀は手を踏みつけて当麻は上から叩き落すからね」
「スイマセン」
「ゴメンナサイ」
「ところで肩車をしてからどうやって私達に乗るつもりなのだ?」
「……あ」
「しまった」
「お、俺、ちょっと足をこれ以上上げるのは……ちょっと…」
「かと言って今の遼の状態で、逆に2人に乗ってから俺を乗せるのも無理っぽいしなぁ…」
「困ったね…どうしようか…」
「あのさぁ、お兄ちゃんたち…」
「や、待て待て純!ちゃーんと取ってやっから!安心しろ!」
「そうだよ、俺、頑張るから!」
「いや、そうじゃなくてさ、あのさ、」
「何か他の手を考えるからもうちょっと待ってろ。な?」
「いや、あのさ、だから」
「遠慮しなくていいんだよ?純」
「そうじゃなくて、」
「我々に気を遣う必要などないだろう?」
「そうじゃなくて!っもー!僕の話、聞いてよ!」
「お、おう、何だ、言ってみ?」
「脚立!」
「脚立?」
「脚立、使ってあそこまで登ればいいんじゃないの?って言いたいの!」
「………あ」
「ああー」
「きゃたつ…」
「成る程」
「盲点」
「伸、脚立ってどこあったっけ?」
「物置で見たような…」
「あ、じゃあ俺、ナスティに鍵貰ってくる」
「脚立であれば遼と秀が支えて当麻が登れば充分か」
「そうだね、じゃ、僕は洗濯に戻るから」
「………………………お兄ちゃんたちって……何か……割と駄目だよね…」
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会話だけ第3段。
3人寄れば文殊の知恵と言いますが、天才混じって5人になると、ただの馬鹿。